アメリカでは住宅診断(ホームインスペクション)を行なうのが常識。そのおかげで、日本よりも住宅の寿命が長いと言われているのです。州によって法律が違うので全体の取引数は異なりますが、約70~90%の住宅に住宅診断が行われています。住宅構造を熟知した住宅診断士(ホームインスペクター)が、建物のコンディションを確認してくれるのです。住宅診断には、一次から二次、三次までステージが存在しています。
住宅診断は、3つのステージに分かれています。各診断について調べましたので、住宅診断を依頼する際の参考にしてみてください。
一次ステージは、主に目視で住宅のコンディションを簡易的に把握して報告する業務です。
大抵の場合、住宅診断と呼ばれるものがこれに該当します。人間で例えるなら健康診断」レベルの診断と言っていいでしょう。主に利用される場面は、中古住宅の売買や定期的な建物の点検を行なうときです。診断を行なうことにより、住宅購入時や売却時に安心して取引できます。
居住中の住宅の場合は、一般の人では見抜けないような瑕疵を発見できる可能性があるのです。一次ステージの診断を受けることによって、住宅のコンディションを知ることができます。
問題がなければひと安心ですが、治療や経過観察が必要な場合は、二次ステージの精密検査が必要になる場合もあるでしょう。そうなったら、その分野に精通した業者に依頼し、検査器具を使用して調べる必要があります。
一次ステージで判別できなかった問題を調査するのが二次ステージ。人間なら「精密検査」のレベルです。リフォーム工事前にも行なう検査で、破壊検査を行なったり専用の機械を使用したりする大掛かりなものとなります。
仕上材付着力検査
鉄筋コンクリートに施されている塗装や仕上材が、どれほどの強度で付着しているかを検査します。専用のボンドを2種類混ぜ合わせ付着板に塗り壁に固定。1時間ほど乾かしてから測定器を使い数値を計測します。
基準はN(ニュートン)という単位で判断され、計測数値が「0.7」以上であれば付着力に問題ないと判断されるのです。
コンクリート中性化試験
付着力検査を行なった箇所にドリルを差し込み、コンクリートのコア部分を抜き出します。その後、フェノールフタレイン1%アルコール溶液という特殊な液を吹きかけ、pH値を測定。アルカリ性が保たれていれば、紫色に変化します。
なるべく、雨風にさられている箇所に施工することが望ましいとされているそうです。
シーリング劣化調査
建築物の防水性や気密性を保つためのシーリング材が劣化していないかを調査します。シーリング材の劣化は目視だけではわからないため、一部を切り抜いて感触や成分の調査が必要。弾力が残っていれば場合問題ありません。
ですが、弾力がなく成分検査で引っかかった場合は施工し直す必要があります。
鉄筋探査試験
壁やスラブ(床や天井など)にクラックが生じている場合、構造的な部分を調べるために鉄筋探査試験を実施。複数の方法があり、状態によって機器を使い分けます。
電磁誘導法は、「フェロスキャン」と呼ばれる装置を使用。交換電流で発生する電解を利用して建物内部の金属部分の強度を調べることができます。
電磁波レーダー法は、「RCレーダー」と呼ばれる装置を使用。アンテナからマイクロ波をコンクリート内に向けて照射することで、鉄筋の位置やコンクリートの厚さを調べられます。X線透過法は、「X線フィルム」を片面に貼りX線を照射。鉄筋をX線フィルムに移しこませることで、コンクリート内部の状態を知ることができるのです。
コンクリート圧縮強度試験
コンクリートの強度に問題がありそうな場合、コア部分を取り出して専用の機械で強度を調べます。基本的には破壊検査になりますが、建物を傷めないように配慮して作業を実施。コンクリートの強度を調べることで、建物の正確な耐久性能をチェックできます。
三次ステージは、性能向上インスペクションとも呼ばれています。人間でいうと「美容形成」といったところでしょうか。
住宅をより良くするためもので、二次に続くものというよりも耐震性や断熱性、省エネ性のために住宅性能をアップさせるための調査になります。主にリフォームやリノベーションなどの大掛かりな工事を行なう際に利用されているようです。
住宅の修繕費用をできるだけ抑えたいなら、日頃からのメンテナンスが大事です。住宅の修繕費用総額は、築年数によって以下のように異なります。
ただし、家の状態によって価値が変わるためデータにはバラつきがあります。
定期点検を行なうことで、建物のコンディションを把握することができます。住宅は人生で最大の買い物といっても過言ではありません。日頃から気をつけていたとしても、気づけていない箇所があるのも事実。住宅診断を行なうことで、住んでいても気づけなかった修繕箇所を知ることができます。
今すぐ修理すべきか、様子を見ながら後々修繕するかをアドバイスしてくれる点も魅力だと言えるでしょう。
住宅は適切な管理を行なえば価値を維持することができます。建築した日から徐々に価値が下がっていくものですが、メンテナンスをすることで価値が落ちるのを抑えられるのです。
住宅を手放すときの価値も維持できますが、なにより家族が日々を過ごす住宅の安全性を確保できるのが重要なポイント。住宅診断による定期点検を行ない、国土交通省の普及推進施策である住宅履歴情報を残すことで、価値と保全の確保を同時に行なうことができるのです。