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これからの住宅購入の考え方

ここ数年、中古住宅の流通量が微増とはいえ伸びています。その理由について検証します。

極端に少ない中古住宅の流通量

家

日本は、中古住宅の売買より新築住宅の着工数のほうが圧倒的に多い国です。総務省や国土交通省の統計によると、新築着工戸数は毎年100万戸以上あるのに対し、中古住宅の流通数は15万戸ほど。

中古物件の割合は全体の約12~13%ほどしかなく、欧米諸国(アメリカが7割以上、イギリスでは9割近く)と比べて圧倒的に少ないのが現状です。これは、日本の住宅の平均寿命が30~40年しかないというのが一因になっています。

住宅の償却の考え方

日本では、新築時の物件価格を法定耐用年数に合わせて償却していくのが一般的です。木造なら22年、鉄筋コンクリート造のマンションなら47年かけて、物件の資産価値はゼロに近づいていくことになります。[注1]

例えば、新築時に3,000万円の木造住宅を22年かけて償却する場合、3,000万円を22年で割って毎年136万円ずつ、約4.5%ずつ資産価値が減っていくわけです。同じ金額のマンションなら、毎年約64万円、およそ2.1%ずつ資産価値が減っていきます。

このように、毎年価値が減っていく減価償却の考え方は、中古物件における「経年劣化による価値の減少」とリンクさせやすいです。そのため、日本では償却後の残存価格=中古物件の市場価格として扱われることが少なくありません。

しかし、本来住宅の償却はあくまでも税務上の考え方であって、住宅の住み心地や寿命とは何の関係もない数字です。日本ではまだ馴染みが薄いですが、資産価値としての住宅価値は、リノベーションや住宅診断によって維持・向上できます。家を高く売って住み替えたり、相続財産としての価値を高めたりするためにも住宅診断が必要なのです。

[注1]国税庁:耐用年数(建物・建物附属設備)

若者世代には中古住宅が人気に

住宅の使い勝手や住み心地に、新築かどうかは関係ありません。基礎や構造に問題がなければ、新築よりも中古住宅をリノベーションしたほうが金額的にお得です。そのため、ライフスタイルや収入に見合った選択を好む若者世代で、中古住宅を選ぶ人が増えています。

政府が既存住宅の再活用を応援していることを考えても、若者世代が中古住宅を選び、さらに住宅診断で資産価値を維持していくのは正しい選択といえるでしょう。

国も中古住宅の流通量増加を後押ししている

こうしたなか、国も中古住宅市場の活性化を後押ししています。例えば、「長期優良住宅」の推進。長期優良住宅制度は2009年よりスタートしましたが、その対象は新築物件のみでした。

しかし、2014年からは中古住宅も対象に。さらに、リノベーションで長期優良住宅の認定を目指す方には補助金も受けられるようになったのです。

中古住宅に対する不安を拭うには

とはいえ、中古住宅に対しての不安材料は多々あるのも現実でしょう。例えば、構造や耐震性などへの不安、新築と比べた時の品質の低さ、今後のメンテナンスコストを踏まえると割高になるのではという疑念などを持っている方が多いようです。

そこで、国土交通省は中古住宅を安心して購入できるよう、住宅診断士による中古住宅の診断を促進させる方針を2016年に打ち出しました。

現段階では、不動産売買契約時(重要事項説明のとき)に、不動産会社が住宅診断を行うか否かを確認することを義務付けるため、「宅地建物取引業法の改正」を行うことを目指していますが、購入者が安心して買えるシステムを作るとともに、中古住宅市場とリフォーム市場の活性化も狙っています

新築であれ中古であれ、これからは住宅診断の需要がますます増えていくことが予測されますが、それは「安心して暮らせる家」「長く暮らせる家」がもっと増えていくことも期待されるのです。

2018年からインスペクションの告知義務化が開始!改正宅建法について徹底解説

家の診断

買主側が安心して中古住宅を購入できるよう、2018年4月1日の改正宅建法施行にともない、インスペクションの説明義務化が盛り込まれました。

インスペクションとは建物状況調査のことで、売買の対象となっている物件を調査し、その状態を確認するために行われるものです。インスペクション自体は以前から行われてきましたが、あくまで買主または売主が任意で行うものでした。

しかし今回の改正宅建法の施行により、宅建業者はインスペクションのあっせんや告知を必ず行わなければならなくなり、不動産業界に少なからず影響を及ぼしています。

インスペクションとは専門の建築士による建物状況調査

インスペクションとは、既存住宅に対し、既存住宅状況調査方法基準に従って建物の状況を調査することです。

調査を行うのは既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士で、国土交通大臣が告示に基づいて登録した講習を特定の機関で受講・修了した者だけが実施できます。

インスペクションの対象は土台から外壁、屋根まで多岐にわたる

インスペクションでは、建物の構造耐力上主要な部分(基礎や土台、床組、柱、梁、外壁など)や、雨水の浸入を防止する部分(外壁や内壁、天井、屋根)を対象として調査を行います。

調査方法の基準は後述する「既存住宅売買瑕疵保険の検査基準」と同等の「既存住宅状況調査方法基準」に則って実施されます。なお、インスペクションは劣化事象などの有無を判定するために行われるものであり、瑕疵の有無を判定したり、瑕疵がないことを保証するものではないので注意が必要です。

改正宅建法の施行にともなうインスペクションの説明義務化とは?

改正宅建法の施行により、2018年4月1日より以下3つの条項が改正されました。

  • 媒介契約書面に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載
  • 宅建業者は、重要事項説明として下記の事項を説明
  • 1)建物状況調査を実施しているかどうか

    2)実施している場合における建物状況調査の結果の概要

    3)設計図書等の建物の建築・維持保全の状況に関する書類の保存の状況

  • 売買等の契約当事者に交付する書面(いわゆる37条書面)に、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者の双方が確認した事項を記載

要約すると、宅建業者は売主または買主と既存住宅の媒介契約を締結する際、依頼者の意向に応じてインスペクション業者のあっせんを行うこと。

また買主に対してはインスペクションの実施の有無や調査結果の概要、保全状況などに関する書類の保存状況を説明することが義務づけられました。

インスペクション説明義務化のねらい

インスペクション説明義務化を宅建業法に盛り込んだ理由は、ひとえに「消費者が安心して中古住宅の取引を行える市場環境を整える」ことにあります。

総務省が実施した「住宅・土地統計調査」と国土交通省が行った「住宅着工統計」によると、中古住宅の流通シェア率は過去に比べると増加している一方、平成21年をピークにだんだんと下降気味になっています。[注2]

また、欧米諸国と比べると日本の既存住宅の流通シェア率は約1/6程度と非常に低く、8割以上が新築住宅着工戸数で占められています。

日本において既存住宅の流通シェア率が伸び悩んでいる理由としては、日本の住宅の耐久年数が海外諸国に比べて低いこと。既存住宅のシェアが根付かないぶん、法規制も整っていないことなどが挙げられます。

実際、国土交通省が実施した住宅市場動向調査によると、中古住宅を選ばなかった理由について「隠れた不具合が心配だった」「耐震性や耐熱性など品質が低そう」「給排水管などの設備の老朽化が懸念」といった回答が多く見られたことが判明しています。[注2]

つまり中古住宅に興味はあっても、素人目では判断できない不具合や劣化が心配で中古住宅のシェアに踏み切れなかった層が一定数いることがわかります。

既存住宅の流通を促進することは既存住宅市場の拡大による経済効果を見込めるのはもちろん、消費者にとってもライフステージに合わせた住み替えなどが可能になり、豊かな住生活を確保しやすくなるといった意義があることから、インスペクションの説明義務化が法に盛り込まれることになったのです。

[注2]国土交通省:平成29年度住宅経済関連データ

インスペクション説明義務化で期待できる効果

家の調査

ではインスペクション説明義務化によって具体的にどんな効果が見込めるのでしょうか?

主な効果を3つまとめてみました。

効果1.消費者のサービス利用の促進

先にも述べた通り、インスペクション自体は昔からあるサービスのひとつで、新築・中古両方の住宅に実施されてきました。

一方でインスペクションそのものの知名度はあまり高くなく、住宅売却経験者と中古住宅購入経験者、そして中古住宅購入予定者それぞれにインスペクションの認知について尋ねたところ、売却経験者は45.6%が「知っていた」と回答したのに対し、購入経験者と購入予定者の認知はそれぞれ2割台と低く、6~7割以上の人が「知らない」と回答しています。

インスペクションの説明が義務化されれば消費者の認知度もアップし、サービスを利用する人が増えることが予想されます。

効果2.建物の質をもとに購入判断・交渉できる

中古住宅購入経験者へのアンケートによると、物件購入後にトラブルを経験した人は全体の17.5%に及んでいます。

トラブルの内容はまちまちですが、多いのは給排水管の漏れや詰まり、雨漏り、外壁・内壁の仕上げの傷みなどが占める割合が多くなっています。

これらは素人が見ただけでは判断することができず、実際に住んでみて初めて不具合が発覚したケースが多いようです。

インスペクション説明義務化によってサービス利用者が向上すれば素人でも建物の質を事前に確認することができ、適切な購入判断や交渉が可能となります。

効果3.既存住宅売買瑕疵保険の加入促進

既存住宅売買瑕疵保険とは、中古住宅の柱や基礎といった構造の主要部分に重大な欠陥(瑕疵)が見つかった場合、その検査と保証を行ってもらえる保険制度のことです。

新築の場合、品確法によって物件が引き渡された後10年間のうちに発見された瑕疵に対する無償補修や損害賠償の義務が定められていますが、中古住宅は品確法の対象外となっています。

そのため、中古住宅の場合は売買時の契約内容にともなって保証期間が決められますが、売主は一個人であることが多いもの。現状は数ヶ月程度の短期保証か、あるいは瑕疵担保責任そのものを免除するケースが大半を占めています。

売主が個人の場合、既存住宅売買瑕疵保険は個人売買タイプを選択することになりますが、このうちインスペクションを担当した事業者が瑕疵保険に加入する「検査事業者保証型」というのがあります。

このタイプでは検査事業者に対して保険金が支払われる仕組みになっていますが、保険期間は1年または5年と長めに設定されています。

これにより検査事業者は依頼主に対して一定の保証を提供することが可能となり、依頼主も安心して中古住宅の購入を検討できるようになるのです。

インスペクション説明義務化で何が変わる?

インスペクションの説明義務化によって、消費者側は隠れた瑕疵や問題点のない中古住宅を簡単に見分けられるようになりました。同時に、住宅の状態を客観的に証明できるインスペクションは、売主側にとっても引き渡し後のリスクを減らせるといったメリットがあります。

「物件の状態がわからない」「ひと目ではわからない問題点があるかもしれない」という不安要素は、中古住宅の購入をためらう大きな原因です。建物状況調査を行う人増えれば、中古住宅市場はますます活性化していくでしょう。

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